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自然

雪渡り~固雪かんこ、凍み雪しんこ

  • カテゴリー:自然
  • 都道府県:岐阜県
  • 投稿日:2008年03月05日 18:05
  • 投稿者: 山田久美子 さん(岐阜県)
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ヒトには想像力があります。

幼い頃に触れた宮沢賢治の童話「雪渡り」
一面の銀世界、狐の子、満月の夜の幻灯会・・・
中部地区の盆地の住宅地で育った私でも、身近な経験と知識を総動員して、その世界を想像して美しく惹かれるものだと感じていました。

賢治の暮らした岩手とは違うけれど
この冬、岐阜県白川村馬狩(まがり)という豪雪のクニに暮らしてみて
“雪渡り”を実際にしてみて
実際は、想像以上だと実感しました。

吉本隆明が日本語論を記した「日本語のゆくえ」という本のレビュー(by道浦母都子)で
(本自体を読んでないのに・・・引用の引用で恐縮です)
――現代の若手詩人の作品は「『過去』もない、『未来』もない。では『現在』があるかというと、その現在もなんといっていいか見当もつかない『無』なのです」その理由として、詩の中に「自然」がなくなり、自然に対する感受性がなくなってしまっている、と指摘する。
とあったが、今の人(私も含め)は自然に触れる機会が生活の中に極端に少なく、だからレセプターがないのだ。
幼い頃から自然に感受性が身に付いていれば1を聞いても10の網目状につながった世界が広がるはずなのに、10を聞いても単体の1くらいしか想像しえないのだと思う。

なんて、いろいろ考えてしまいますが
数日の降雪の後の、たまの天気の日はとても気持ちがいい!
積雪が晴れて締まって、飛騨地方(岐阜県北部)方言でいうところの“かってこ”状態の雪原はまさに“雪渡り”が可能な世界で、
長靴で、深沓(雪沓)で、スノーシューで、かんじきで、でかけたくなります。

お客様の車の導線になる道路は除雪が入っていますが、
反対方向に100mも進んで、
迷路の行き止まりみたいになってる自分の身長よりも高い除雪止まりの壁をよじ登れば
そこはまさにMy very own snow-field !!
普段の頭上より高くを歩けるわけだから視線がぐんと高く、電線が近いし、樹の梢も近いし。
低木も、下草も、ススキだらけの原も、すべて雪の下だから移動の自由もきく。
(もちろん、川とか溝とかでっぱりとか斜面とかそういう危険がないことは確認の上で。)

足跡もいっぱい。
これは蹄っぽいし大きいからカモシカ? 小さく直線状に続くのはキツネ? テン?
なんか引きずった跡があるけどリス? ウサギ? ネズミ??
なんだこの花型は?・・・スキーのスットク! だれかのバックカントリースキーの跡か。
等々。
この足跡はどこへ行くんだろう? どこまで辿れるだろう? と、アニマルトラッキングできるのも豪雪ならでは魅力。

自然学校には「インタープリター」という職業のスタッフがいます。
直訳すると「通訳者」。
通常「自然解説員」なんて簡単に紹介してしまいますが、自然や文化の持つメッセージを分かりやすく「通訳」する役割を担います。
普段はお客様に自然体験のプログラムをご提供。
自然への知識が薄い私など、足跡を写真に撮って見てもらって、なんの動物か・どうやって走るからそうした足跡がつくのか、など教えてもらいます。
ほー、ほー、と感心の連発。
さらにはウサギが自分の糞を食べる話、“反芻”の意味、盲腸の役割などなど、話は尽きません。

そんな知識とは別に、ただぼぉーっとするのもいい。
道から数十m離れるだけでも、なんだかとても静か。
大の字に寝転んでみる。
たっぷり降ったあとだと、表面はけっこう柔らかい。
究極の低反発ベッドみたいに、自分の身体の重みの分だけ心地よく沈んでくれる。
少し横を向けば、鼻先からずっと続く雪原の広さ。雪にけぶる木立の美しさ。空の青さ。
地面の上でも、空の中でもない、不安定で安定している不思議な抱擁。
静かだけど、生き物の気配はなんとなくするから寂しくないし。
1月よりも鳥がにぎやかで、確かに春の訪れを感じながら。

夜もいい。
月の頃はさらなり。
空気が青インクに触れたみたいに世界が透明で青いのです。
電柱や木立の影など、はっきりとして、童話の如く今にも動き出しそう。
自分の指先も、まるで昼間のようにクリアにみえるのですが(でも普通に写真を撮ろうとするとエラーになるので、カメラには光量が少ないらしい。人間の目って不思議だ。)
全体として弱い光量が雪のリフレクションで何方向にも回りまわっているのか、
やはり風景の見え方が昼間とは異なる。
雪をかぶった白い馬狩荘司山など、紗幕の向こうの世界のように浮き上がっている。
これまたちょっと、雪の上に寝転がって空を眺めてみる。
時間にして1分もそうしていないのだけど、
自分の「生」のうちでそういう時間を持てることを、とても幸せに感じます。
一生に一度も味あわずに済んでしまうこともあるだろうに。



コメント 

6件のコメントがあります  最新3件表示

澤幡博子 さん(茨城県) 2008年03月06日 12:17
いろいろな分野が専門化して、知識が増えてきている中
「通訳」という仕事の必要性は高まってきていると思います。
それはそれで有用ですが、自分のレセプターも磨いていかないとダメですね・・・。
白川郷に行ってみたくなりました。
編集長・野口智子 さん(東京都) 2008年03月08日 18:18
この記事を読んで、山田さんと一緒に、
よじのぼり、歩いて、ひっくり返って、
耳を澄まして、匂いをかいで・・、経験した
気分です。電柱の位置からどのくらいの
空中にいるのかわかりますね。地面でも
空でもない、雪の上の時間。一生のうちに
本当に体験したくなりました。
丸岡一直 さん(秋田県) 2008年03月09日 00:18
こちらもかた雪の季節になりました。
ふだん歩けないところを歩ける。
夏に、プールの水の上を歩いて行くような気分です。

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